ゼニス/デファイ コレクション 技術だけではない新生ゼニスのフラッグシップ

1/100秒計測を可能とした“エル・プリメロ9004”を初搭載して、2017年に華々しいデビューを飾った「デファイ コレクション」。新生ゼニスを象徴するエッジを効かせたケース造形はそのままに、いよいよ今年はエリートベースの3針モデルである“クラシック”と、3軸ジンバル内に調速脱進機を収めた超複雑系の“ゼロG”を加え、いよいよコレクション ラインナップの全貌が明らかとされた。 デファイ コレクション最多のラインナップを誇る “1/100秒計測エル・プリメロ” 2017年に登場した“エル・プリメロ21”、すなわち「Cal.エル・プリメロ 9004」は、新生ゼニスの画期となったムーブメントである。かつてタグ・ホイヤーで複雑機構開発の陣頭に立ったギィ・セモンのゼニス参加と同時に開発が進められ、初めてエル・プリメロの名を冠するムーブメントが、1/100秒計測の快挙を成し遂げることになった。1969年に発表されて、世界初を競い合った自動巻きクロノグラフの一翼を担ったエル・プリメロは、同時に1/10秒計測を可能とした超ハイビートクロノグラフとしても勇名を馳せた。新時代を担う“エル・プリメロ21”は、ベースとなる基礎輪列を10振動/秒のエル・プリメロと共有しながら、100振動/秒の高速振動専用輪列を独立配置している。基本構成は、ギィ・セモンがタグ・ホイヤー時代に基礎開発を進めてきたプランを革新させ、エル・プリメロ21では高速振動側のパワーリザーブが約50分にまで延長され、十分な実用性も確保している。実際の製品化に際しては、一部のマテリアルが見直された程度で、ほぼプロトタイプそのままの設計で市場投入されている。日本市場には、昨年10月からデリバリーが開始されており、現在ではほぼ安定供給と言える状況にまで、熟成改良が進んでいるようだ。  Cal.9004を初搭載した「デファイ エル・プリメロ21」は、ケースデザインにおいても新生ゼニスコピーに転換点をもたらした。従来のフラッグシップである「クロノマスター コレクション」が、クラシカルな趣きに重きを置いていたとすれば、デファイの造形センスは群を抜いている。幅広のフラットプッシャーを備えるケースの造作は、力強さの中に、ほんの少しだけクラシカルな繊細さを残しており、その絶妙な案配が素晴らしいのだ。ダイアル上の表示を整理しておくと、センターが1/100秒積算計、6時位置が通常の秒積算計、3時位置が30分積算計となり、9時位置は永久秒針となる。ダイアル側から見た場合、7〜8時位置に通常のテンプ(10振動/秒)が確認できるため、輪列設計を既存モデルから転用しつつも、その配置が全く異なっていることが見て取れる。  一方、ローター側から覗く小さなテンプが、高速運針用の専用輪列である。通常輪列側とは異なり、この輪列はセンター針の駆動のみに用いられるため、クラッチ機構を持たず、ストップ/リセットの機能だけが与えられている。通常輪列側の積算機構をスタートさせると同時に、テンワの動きを規制していたハックレバーが外れ、超高速積算がスタート。ストップ時は再びテンワをハックするのみだ。もっとも、センターの超高速積算針と、1秒以上の計測を担う通常の積算輪列とは連動していないため、スタート/ストップの動作をいかに同調させるかが、計測精度を決めるカギとなる。プロトタイプ発表からデリバリー開始までに行われた熟成改良の成果は、この連動に現れているようだ。 ラインナップの拡充を経て 新生ゼニスのコアコレクションへ! 2017年10月からデリバリーが始まった「デファイ エル・プリメロ21」は、バーゼルワールドでの新作追加を経て、総勢18種類のラインナップを誇るまでに拡張された。ゼニススーパーコピー=高性能クロノグラフというイメージからすれば、これからもエル・プリメロ21がデファイの中核を担ってゆくことは間違いないだろう。一方、デファイの斬新なケース造形は、より先進的な試みを盛り込むキャンバスとしても打ってつけだ。例えば、従来のスイスレバー式調速脱進機の仕組みを、多重的なシリコンパーツの層に置き換えた“ゼニス オシレーター”を盛り込んだ、世界限定10本の「デファイ ラボ」が好例だろう。デファイの持つデザインの柔軟さは、バーゼルワールドでお披露目されたふたつの新作からも窺い知れる。ひとつは名機エリートを搭載する自動巻き3針モデルの「デファイ クラシック」。もうひとつは調速脱進機そのものを3軸ジンバルの中に収めた「デファイ ゼロ G」だ。高速クロノグラフのエル・プリメロ21を中核に置きつつ、スタンダードとコンプリケーションの両翼を拡げたデファイ コレクションは、いよいよ新生ゼニスの象徴的存在へと飛躍を遂げようとしている。  「デファイ クラシック」が搭載するムーブメントは、薄型自動巻きの名機として名高いCal.エリート670SK。ガンギ車とアンクルを軽量なシリコン製に置き換えたことで、脱進機効率を高めた現代スペック機だ。加えてCal.670SKの受けには大胆なオープンワークが施されており、メカニカルな印象を強めている。あのデファイ ラボのオシレーターを思わせるオープンワークダイアルにも、このムーブメント造形はベストマッチだ。もちろんデファイ クラシックには、幾何学的なオープンダイアルの他に、よりシンプルなクローズドダイアルも用意されている。やや太めのバーインデックスが、エッジを効かせたケース造形と相まって、フォーマルな袖口にも程よくマッチする。バーゼル発表時にあったオールド書体のデファイロゴを、潔く取り去ってしまったことも好印象だ。プロトタイプのヴィンテージルックも魅力的だったものの、プロダクト版のほうがスーパーコピー時計としての自由度は抜群に高い。  調速脱進機を3軸ジンバルに収めることで、テンプが常に水平姿勢となる「デファイ ゼロG」は、ゼニス流のハイテクノロジーを象徴する1本だろう。旧来の「アカデミー」などに搭載されていたゼロGシステムよりも、ジンバル自体が約30%も小型化されたため、デファイのケースフォルムを壊すことなく搭載に成功している。Cal.エル・プリメロ8812Sというムーブメントナンバーからも分かるように、輪列設計の基本はエル・プリメロであり、10振動/秒の超ハイビートを継承している。かなりの特殊機構ではあるものの、現行で唯一の手巻きエル・プリメロとして、ゼニスのDNAもしっかりと受け継がれている。  デファイ コレクションの登場は、従来のゼニスが誇っていた技術一辺倒のイメージを軽やかに払拭した。70’sスタイルのケース造形は、エッジを効かせつつ、より艶やかさを増した。フルオープンワークが施されたダイアル造形も、今後のゼニスを象徴するものになるはずだ。一方、クラシカルなゼニスを好む愛好家向けには、よりノーブルなクローズドダイアルが用意される。デファイという新造形をターニングポイントして、ゼニスのデザインセンスそのものが大きく飛躍を遂げた印象だ。ともあれ、ラインナップの完成を迎えたデファイ コレクションが、新生ゼニスを象徴するコアコレクションに成長することは間違いない。